19.ミュンヘン|BMWミュージアムが閉館中で出会った王宮レジデンツとは?

美術館

旅先で計画通りに進まないことはよくある。
けれど、その“予定外”が記憶に残る瞬間をくれることもある――

今回のミュンヘン旅行では、それを強く実感しました。

目的は「BMWミュージアム」を訪れること。教習所の映像で出会ったE34に心を奪われ、ずっと憧れていた空間です。ところが、現地で知ったまさかの改装中。

行き場を失った私は、地図も見ずに旧市街を彷徨い、静かな石造りの建物「レジデンツ」に辿り着きました。

この記事では、そんなミュンヘン旧市街で偶然出会ったレジデンツ王宮をめぐる旅の記録を、宝塚ファン目線で綴っています。

【この記事でわかること】

  • レジデンツの歴史と建築的魅力
  • 宝塚ファン目線で楽しむ展示スポット
  • レジデンツへのアクセス・営業時間・チケット料金

展示空間に宿る演出美や、服装と空間が調和する感覚、“まるで舞台に立つような美術館体験”を、ぜひあなたにも感じていただけたら嬉しいです。

 

ミュージアムが閉館中|予定変更して見つけた街歩きルート

ミュンヘン旧市街の朝は、どこか舞台の開演前を思わせる静けさがありました。

石畳の道にやさしく光が差し込み、パン屋の前で笑い声が交わされる――そんな街角の空気が、少しずつ心をほぐしてくれました。

旅の目的だったBMWミュージアムが改装中だと知った私は、地図も見ずに街を歩いていました。

マリエン広場から横道へと入ると、目に飛び込んできたのは、一見すると美術館とも劇場とも思えない、控えめな石造りの建物。

上には小さく「Residenz」の文字。

観光地特有の賑やかさはなく、初めて訪れる私には少し「入りづらい雰囲気」すら感じられました。

でも一歩中に入ると、空気がすっと変わって、ここが“ただの王宮”ではないことがすぐにわかりました。
中世から近代まで王族の美意識が染み込んだ空間に、私は舞台袖から客席へ誘われたような気持ちになったのです。

 

ミュンヘン旧市街|レジデンツ|歴史と雰囲気を体験レビューで紹介

扉を開け、数歩進むと空気が変わりました。

天井が高く、光が差し込む中庭に出た途端、ミュンヘンの街歩きでは味わえなかった“舞台裏の静けさ”がそこに広がっていました。

建物の奥には、時代の美意識が舞台装置のように配置され、宝塚ファンの私にとっては「美と演出」の宝庫でした。

私は朝9時の開館と同時に中へ入り、チケット売り場の奥にある中庭を抜け、オーディオガイドを手に“王家の回廊”へと足を踏み入れました。
そして、“今日の旅は観光ではない。美に身を委ねる本番なのだ”という気持ちで静かに歩き出したのです。

 

レジデンツ体験記|宝塚ファンが感じた“舞台のような展示空間”

アンティクヴァリウム|誰もいない大広間で味わったプロローグの美

“王家の回廊”に足を踏み入れた直後、視界に広がったのがアンティクヴァリウム。
壁際に並ぶ胸像たちは、まるで舞台袖で出番を待つ出演者のようでした。

66mもの長さがある回廊の中央に立つと、天井画がこちらを包み込むように広がり、まるで宝塚の「プロローグ」に出くわしたような錯覚に。

誰もいない朝の空間は、“私のためだけに用意された舞台”のようで、心がじんわりと震えました。

天井画を見上げながら歩いていると、まるで自分が舞台のセンターに立っているような錯覚に。 「この空間、宝塚の“プロローグ”に使えそう」と思わずメモを取りました。

 

祖先画ギャラリー|肖像が語る王家のレビューと歴史の流れ

金の装飾が施された回廊に、ヴィッテルスバッハ家の肖像画が121枚。 その並びはまるで“レビューの群舞”のようで、視線を左右に動かすたびに歴史のリズムが感じられました。

ルートヴィヒ2世の肖像を見つけた瞬間、「エリザベート」や「ルートヴィヒ」の舞台が脳内再生。 肖像の表情に“演じる者の覚悟”を感じて、しばらくその前から動けませんでした。

 

宝物館と騎馬像|王家の財宝展示で感じた舞台照明の演出力

聖ゲオルクの騎馬像の前に立ったとき、私の視界が一瞬で舞台照明の中に変わりました。

王冠でも宝剣でもなく、“王族の誇り”が最も強く輝いていたのは、この騎馬像でした。
胸元に埋め込まれた宝石が、スポットライトのように一瞬で視線を奪いました。

“ここで私たちは誰を輝かせようとしたのか”と問いかけてくるようで、演出の意図が展示室全体に宿っているように感じました。

展示室の照明が宝石に反射して、壁に虹色の光が広がった瞬間、「これが王家の“舞台照明”かぁ」と思わず息を呑みました。

 

キュビリエ劇場|モーツァルトが演じたロココ様式の宝石箱

赤と金の装飾が美しいロココ様式の劇場「キュビリエ劇場」。 モーツァルトが初演を行ったとされるこの空間は、宝塚の大劇場をミニチュアにしたような華やかさ。

客席に座って天井を見上げた瞬間、思わず呼吸を止めてしまいました。

ロココの曲線が音もなく包み込んでくる空間は、もしここで宝塚を観劇したら…と妄想が止まらず、ひとり静かに“脳内公演”が始まったような気分に。

 

オーディオガイドが語る王宮のドラマと展示背景

オーディオガイドが語る王家のエピソードは、まるでナレーターの声で始まる舞台の一幕のようでした。

「この絵は、王が結婚した記念に描かれたものです」 そんな説明のなかに、人間のドラマがにじんでいる気がして、展示物を観る眼差しが少し変わりました。

フレスコ画を眺めながら説明を聴いていると、「この空間も、王家の人生も、“演出された舞台”だったのかも」とふと考えました。

 

旅の服装と空間の調和|予定外の美空間にカジュアルコーデが溶け込むまで

本当は、BMWミュージアムに直行するつもりだったので、服装はカジュアルなパンツスタイルでした。

ネイビーのスリムパンツに、動きやすいレザースニーカー。そして軽めのアウター。
まるで“技術美”を感じる空間に向かうテンポを意識した、機能性重視のコーデ。

でも、思いがけず訪れることになったレジデンツの空間は、それとはまるで異なる“格式と演出の美”に満ちていました。

アンティクヴァリウムを歩きながら、自分の足音と衣擦れの音が響いていることにふと気づいた時、服装までもが空間の一部になっているような感覚に包まれました。

「本当はもっとドレープのあるワンピースで来るべきだったかも」 そんな思いもよぎりましたが、“旅の偶然と空間との調和”こそが演出のはじまり。

そう思った瞬間、どんな服でも“その日の私”を舞台に乗せることができると感じました。

 

アクセス案内|レジデンツの行き方・最寄駅・所要時間とおすすめの訪問時間帯

レジデンツは、ミュンヘン旧市街の中心に位置し、買い物やカフェ巡りの合間にも立ち寄れる距離にあります。マリエン広場から徒歩約4分、まるで舞台の幕間に訪れる劇場のような感覚で、街の喧騒から一瞬だけ物語の世界へと誘ってくれます。

住  所 Residenzstraße 1, 80333 München
最 寄 駅 地下鉄U3/U6「Marienplatz」駅 徒歩約4分
営業時間 4月〜10月:  9:00〜18:00
10月〜3月:10:00〜17:00
入場料 博物館:€10
宝物館:€10
劇場:€53施設セット:€20(18歳未満無料)
所要時間 博物館:約2時間
宝物館:約40分
劇場:約30分
💬 アクセスメモ:大通り沿いにある「RESIDENZ MÜNCHEN」と書かれた扉が入口の目印です。建物の奥へ進むと中庭が広がり、そこから“王家の舞台”が静かに始まります。
ミュンヘンの街歩きにアクセントを加えたいなら、午前中の静かな時間帯の訪問がおすすめです。

 

まとめ|BMWに会えなかった旅が“美術と演出の融合体験”へと変わった理由

レジデンツを巡る5時間は、心の深呼吸のような時間でした。

訪問前はBMWミュージアムが閉館中で気持ちが沈んでいたはずなのに、気づけば私は“美に包まれる旅”の主役になっていました。

静かな展示室に響く自分の足音、額縁に映り込む自分の姿、そして天井のフレスコ画に背中を押される感覚。
展示品を見ているはずなのに、気づけば自分がその場面の一部になっていました。

たとえば額縁に映った自分の影が、まるで“舞台の登場人物”のようで、私は無言のままその演出に参加していたのです。

入口で感じた“入りづらさ”が、今では懐かしく感じられます。
予定外だったこの王宮で、私は思いがけず「舞台に立つ感覚」を味わっていました。
展示品を観るだけでなく、空間の静けさに服装も思考も馴染んでいく。
あの5時間が私を少しだけ変えてくれた気がします。

次回は、レジデンツの余韻をまといながら訪れた「ミュンヘンで見つけた宝塚的カフェ」について綴ります。 王宮の静けさから、街角のロマンへ。美を探す旅は、まだ続いています。

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