「外観は質素なのに内部は豪華絢爛」──ミュンヘン旧市街のセンドリンガー通りにある「アザム教会(Asamkirche)」は、外観の控えめさと内部の豪華さのギャップが魅力のバロック建築です。宝塚ファンの私にとって、この教会はまるで舞台の幕が上がる瞬間のような感動をくれました。
この記事では、実際に訪れた体験談を交えながら、アクセスや撮影のコツなどを詳しくご紹介します。
外観からは想像できない豪華さ
地下鉄「Marienplatz(マリエン広場)」からセンドリンガー通りを5分ほど歩くと、カフェやショップに紛れてひっそりとした教会が現れます。
初めて訪れたとき、私は地図を見ながら「本当にここで合っているのかな?」と不安になりました。周囲は普通の街並みで、観光名所らしい雰囲気はゼロ。建物の外壁には彫刻やスタッコ装飾が施されており、入り口上部に配置されている聖人像が、ここが教会であることに気付かせてくれます。
隣にいた観光客も「え、これが教会?」と拍子抜けした様子で首をかしげていて、みんなで半信半疑のまま扉を押し開けた瞬間、全員が一斉に「わぁ!」と声を上げたのが印象的でした。外観と内部のギャップが、まるで舞台の袖から一気にスポットライトを浴びる瞬間のようでした。
扉は一見地味ですが、開けた瞬間に内部の豪華さが広がる“舞台の幕”のような存在。「ここが観光名所?」と思うほどのギャップが、この教会の最大の魅力です。
内部装飾は黄金に包まれたバロックの芸術空間
扉を開けると、目の前に広がるのは黄金の祭壇と天井画。私は思わず足を止め、しばらく動けませんでした。隣にいた観光客も同じように立ち尽くし、天井を見上げていました。小さな空間なのに、視線を動かすたびに新しい発見があり、舞台装置のように立体的な構成美を感じました。
小さな教会でありながら、内部はまるで大劇場の舞台に立っているかのような錯覚を覚えます。
残念ながら地下聖堂には入れませんでした。そこは「聖週間」と呼ばれる特別な時期しか公開されないそうです。次に訪れるときは、ぜひその地下聖堂も見てみたいと思っています。
主祭壇:光の中心にある神聖な輝き
祭壇の中央には、放射状に広がる金色の円形装飾(サンバースト)があり、まるで神の光が差し込むような神秘的な雰囲気を醸し出しています。中央には聖母マリアと思われる像が立ち、周囲には天使たちが舞い、信仰と芸術が融合した象徴的な構図です。黄金の輝きに包まれた祭壇は、まさに舞台のセンター。光が差し込むと、トップスターにスポットライトが当たったような存在感でした。
天井画:天上の世界を描いたフレスコ
天井には、雲の上に浮かぶ天使や聖人たちが描かれたフレスコ画が広がっています。色彩はブルー、ゴールド、ピンクなどが使われ、空間全体が「天国の劇場」のような印象に。天使たちが舞うフレスコ画を見上げた瞬間、宝塚の大階段で羽根を背負ったスターたちが降りてくる場面を思い出しました。
側壁と柱:彫刻と金箔の競演
側壁には、大理石のパネルと金箔で縁取られた宗教画が並び、柱にはねじれた形状の装飾と金色のキャピタル(柱頭)が施されています。これらの装飾が空間にリズムを与え、歩くたびに視界が変化します。
バルコニーとギャラリー:立体的な構成美
上部にはバルコニー状のギャラリーがあり、そこにも天使の像や金色の欄干が施されています。視線を上げると、空間が縦に広がっていることを実感でき、教会全体が「立体的な舞台装置」のように感じられます。
説教壇(プルピット):細部まで芸術的
祭壇の右側には、金色の説教壇(プルピット)があり、ドーム型の屋根と彫刻が施された台座が特徴的。説教壇の上には小さな聖人像が立ち、細部まで芸術性が宿っています。
光の演出が生み出す朝夕の感動
午前中は柔らかな光が青と金を優しく照らし、穏やかな雰囲気を演出。夕方になると斜めから差し込む光が陰影を強調し、舞台照明のようにドラマティックな空間に変わります。
私が最初に訪れたのは午前10時頃。観光客が少なく、静けさの中で黄金の祭壇をじっくり眺めることができました。まるでプライベート観劇のような贅沢さで、柔らかな光が空間を包み込み、心が落ち着きました。
その後、夕方に再訪すると、内部は混雑していて人の声が響いていましたが、夕陽が差し込むと金色の装飾が赤みを帯び、舞台のフィナーレを迎えるような荘厳さを感じました。人混みの中でも、光の演出が空間を劇的に変える瞬間に立ち会えたのは忘れられません。
アザム教会の基本情報|アクセス・営業時間・チケットなど
通りを歩いていても見逃しやすいので、住所や地図を頼りに近づくのがおすすめです。
| 所 在 地 | Sendlinger Straße 32, 80331 München |
| アクセス | 地下鉄「Marienplatz(マリエン広場)」から徒歩約5分。 ヴィクトアリエンマルクト市場からも近い。 |
| 営業時間 |
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| 滞在時間は30分程度で十分。 光の変化を楽しみたいなら午前と夕方の二度訪問がおすすめ。 |
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| 入 場 料 | 無料(寄付歓迎) |
| 注 意 点 | ミサや宗教行事の時間は観光不可。 内部は狭いため混雑時は待ち時間が発生することもあります。 宗教施設なので露出の多い服装は避けましょう。 |
写真撮影のベストアングル(体験談付き)
アザム教会は内部が非常に狭いため、撮影には工夫が必要です。私自身が訪れた際に試したアングルと、そのときに感じたことを交えてご紹介します。
撮影扉を開けてすぐの位置からカメラを構えると、黄金の祭壇と天井画が一直線に収まります。初めてこの構図で撮ったとき、写真を確認した瞬間に「まるで絵葉書のようだ」と感動しました。狭い空間でも、この角度なら教会の豪華さを一枚で表現できます。
真上にカメラを向けると、フレスコ画の迫力がダイレクトに伝わります。午前中に撮った写真は柔らかな光に包まれて穏やかでしたが、夕方にもう一度撮ると陰影が強調され、まるで舞台照明を浴びているようなドラマティックな仕上がりです。二度訪れて撮り比べると、同じ構図でも昼公演と夜公演のように違う雰囲気が残せました。
祭壇の横に立ち、斜めから構えると曲線的な装飾が立体的に浮かび上がります。私が撮った写真では、金色の輝きと影が交差して、まるで舞台のクライマックスシーンのような雰囲気になりました。広角レンズを使ったときは歪みが出てしまいましたが、標準レンズに切り替えることで細部の美しさを残せました。観光客が少ない時間帯なら、この角度でじっくり撮影できます。
外観は質素ですが、通りの賑わいに紛れる姿を引きで撮ると「隠れた名所感」が伝わります。私は通りを歩く人々と一緒にフレームに収めてみましたが、街の生活に溶け込む教会の姿が印象的で、旅の記録としても良い一枚になりました。
後日、昼過ぎに訪れたときには内部は観光客でいっぱいでした。
狭い空間なので10人ほどで身動きが取りづらく、写真撮影も難しくなります。観光客の反応はさまざまで、扉を開けた瞬間に歓声を上げる人、天井を見上げてしばらく動かない人、祈りを捧げる人など、それぞれがこの空間に圧倒されていました。混雑時は写真よりもまず空間全体を目で楽しむ方が良いと感じました。
撮影におすすめの持ち物とコツ(体験談付き)
- 広角レンズ付きカメラ
内部が狭いため、広角レンズを使うと全体を収めやすいです。私は24mmのレンズを持参しましたが、祭壇から天井まで一枚に収められ、後で見返したときに「この空間の圧倒感を残せた」と感じました。 - スマホ撮影の工夫
HDR機能をオンにすると、窓から差し込む光と暗い部分の両方を美しく表現できます。実際にスマホで撮った写真は、カメラで撮ったものとは違う柔らかさがあり、SNSに投稿したら「まるで絵画みたい」と反響がありました。 - 三脚は不要
狭い空間なので三脚を立てるのは難しく、手持ち撮影がおすすめです。私は手ブレ防止機能を活用しましたが、十分に鮮明な写真が撮れました。 - 午前と夕方で撮り比べ
午前は柔らかな光で穏やかな雰囲気、夕方は陰影が強調されて荘厳な雰囲気。私は午前と夕方で同じ構図を撮り比べましたが、まるで別の教会を撮ったかのように印象が変わり、アルバムに並べると「光の演出の違い」が一目で分かって楽しいです。
まとめ:小さな扉の向こうにある「旅の特別な瞬間」
アザム教会は、外観からは想像できないほど豪華でした。もともとアザム兄弟が自分たちの信仰と芸術のために建てたプライベートな教会であるため、普通の教会とは少し違っていて、芸術家兄弟のセンスやこだわりがあちこちに感じられます。
また、無料で入場でき、街歩きの途中に立ち寄れる気軽さも魅力の一つ。
午前は静けさの中で“プライベート観劇”のような体験を、昼は観光客の驚きや感嘆の声を共有し、夕方は“フィナーレ”のような荘厳さを味わえます。写真撮影では失敗もありましたが、その工夫も含めて旅の思い出になりました。
アザム教会は、ミュンヘンの中でも、そして世界の中でもとても珍しい教会です。街のにぎやかさと、教会の神秘的な雰囲気のギャップを楽しめるので、旅行で訪れる価値があると思います。小さな扉を開けた瞬間に広がる黄金の舞台は、旅の中で「ちょっと特別な瞬間」を感じさせてくれるはずです。あなたのミュンヘン旅行に、この驚きと感動をぜひ加えてみてください。



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